竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 鉄柵製の扉の向こう側は薄暗く、よく見えない。けれど、入口と小さな窓から差し込む光で僅かに見える地面には、わらのようなものが散らばっているようだ。
 そこに、うろうろと蠢くものがいるので、あれが魔獣だろう。

(それにしても、ひどい臭い……)

 ミレイナは思わず、持っていたハンカチで鼻と口を覆った。きちんと清掃されていないのか、中から汚物のような悪臭がする。

「ミレイナ。ここの魔獣、すごい凶暴だって有名だからもう行こうよ。さっきの人も、たぶんお尻を噛まれそうになって逃げ出したのよ」

 リンダが背後からさっさとここを立ち去ろうと促してくる。

「うん、もうちょっとだけ」

 ミレイナは、中をじっと見つめた。

(こんなところに閉じ込めたら、魔獣だって気が立つわ)

 ミレイナは前世でペットショップで働くほど、動物が好きだった。
 ここにいるのは魔獣なので動物とはまた違うのかもしれないが、どうしても放っておく気になれない。

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