竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
(2)魔獣係になる
(あれは、ジェラール陛下?)
ミレイナがそちらを見つめていると、ジェラールは真っ直ぐにこちらに歩み寄ってきて、ミレイナに手を差し出す。
「大丈夫か?」
「あ、はいっ」
大きな手に自分の手を重ねると、力強く引き上げられた。ジェラールは次に、腰を抜かして近くにへたり込んでいたリンダのことも助け起す。
ミレイナは、おずおずとジェラールを見上げた。なにかを探すかのように、その視線は周囲の地面を彷徨っている。
「陛下、どうしてこちらへ?」
「いや……、気分転換だ」
「気分転換……」
一瞬、間があってからの取って付けたような答えに、ミレイナは首を傾げた。
見渡す限り、ここには魔獣の保護獣舎以外、何もない。
近くにあるのはゴミ捨て場だけだ。
ジェラールはそれ以上は何も言わず、口ごもった。
そして、ゴーランに責めるような視線を向ける。
一方のゴーランは、役目は果たしたとばかりに尻尾を振っていた。