竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 年の頃は四十歳前後だろうか。ミレイナが会うのはこれが二回目で、一度目はメイドとして働き出すことが決まった昨日の朝だ。
 リンダによると、若いときはまだ幼かった現竜王陛下であるジェラールのお世話係をしていたらしい。

 作業が終わるまで待とうと、じっとしていると、ようやくメイド長が顔を上げる。

「話は陛下の使いの者から、概ね聞いております。陛下の魔獣の収集癖は困ったものね。傷ついていると放っておけないようで、ようやく元気になっていなくなったと思うとまたどこからか拾ってくるのよ」

 メイド長はそう言うと、はあっと息を吐いた。
 
「魔獣係が早々に辞めてしまったのは想定内だとして、あなたはその後任に立候補したそうね? 本気かしら?」

 銀縁眼鏡の奥の深緑の瞳がこちらの真意を探るように眇められる。
< 89 / 319 >

この作品をシェア

pagetop