ゆめ恋。



毎日毎日、家の片づけをして、掃除をして、ご近所さんにお世話になりましたの挨拶をして
たまに、学校に行って転校先の学校を先生から紹介されたりと、引っ越しまでの1週間は本当に忙しくて私はあれから里穂と会うことが全くできないまま、引っ越しの日を迎えてしまった。


「綾那、そろそろ行くよ?」

「…うん」


引っ越し業者のトラックを見送り、最後に空っぽの部屋を1人で眺めていた。
10年間お世話になったこの家に、最後のお別れをね。

でも、そんな時間ももう終わり。
ついにこの家を出るんだ。


「あ、綾那!」

「んー?」


玄関から大きな声で呼ぶお母さんに近づくと、外には里穂が立っていた。


「里穂!え、塾は…?」

「はは、抜けてきちゃった」


夏休み、いつもこの時間は塾なのに…
私のために、抜け出してきたんだ…


「…ごめんね。
でも最後に会えてうれしいや」

「私も、間に合ってよかった。
これ、体育祭の時の写真渡すのずっと忘れてたよー」

「え!?私もすっかり忘れてた…」


そういえば、里穂がカメラ持ってきてくれて、クラスの子たちとたくさん写真撮ったんだった…
もうすっかり忘れてたよ…


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