ゆめ恋。
***
「送ってくれてありがとね」
「いいよ。こっちこそ、こんな時間までありがとね。
また明日」
「ん、また明日ねっ」
私はマンションに入って、エレベーターのドアがしまるまで手を振ってくれた慧にまた手を振って、慧と別れた。
「ただいまー」
「おかえり。遅かったね?」
「うん、映画見てきたの」
「そっか。早くお風呂入っちゃいなさい?」
「はーい」
お母さんとお父さんに顔だけ見せて、私はすぐに部屋に入った。
最近の私の日課と言えば、部屋に入ってすぐに窓の外に話しかけることだった。
…でも、話しかけていいのか悩む…というか
昨日のことがあって、変に意識しちゃってうまく話せてないし…
…でも、顔見えないから、ここならうまく話せるかな…
「…綾那?」
「うぇ!?」
「…何その声」
び、びっくりしたー…
話しかけよう!としたらいきなり話しかけられるんだもん…
「び、びっくりしたっていうか…
今まさに話しかけようとしてたとこだったから…
はぁ、びっくりした」
…あ、うん
やっぱり普通に話せてる…
…やっぱり、一樹とは普通に話していたいもん。
話せなくなるなんて、嫌だもんね。