ゆめ恋。

夢のはじまり




___高校3年、夏

受験に向けて、勉強尽くしの毎日

今日も塾が終わり22時、無事に今日も帰宅した。


もうお風呂も入り終わった両親が元気に「おかえりー」と言ってくれる、そんないつも通りな光景を待っていたのに


「ごめん、綾那。
こんな大事な時期だけど、引っ越すことになったよ」

「え…っ?」


申し訳なさそうに、お父さんはそんなことを言った。


「8月1日付けで本社への異動が命じられて。
悪いんだけど、綾那が夏休みに入ったら東京引っ越すよ」

「えっ、え!?
じゃあ私学校は…!?」

「転校することになる。
受験の大事な時期で本当に悪いと思ってるんだけど…」

「や、やだよ!!
今年で卒業なのに…単身赴任とか、ここから通勤すればいいじゃん!」


だってここ、静岡だよ!?
東京なんて、新幹線で1時間じゃん…
ギリギリ通勤圏内じゃん…


「綾那、お父さんだって本社に異動になると今よりもっと忙しくなるの。
それなのに単身赴任とか通勤じゃお父さんが大変だってわかるでしょ?」

「それじゃ私が転校は大変じゃないって言うの!?
だったら私1人がここに残る!!」

「……綾那。
綾那も来年には東京の大学に行くって言ってたじゃない。
友達と離れるのとか新しい環境とか辛いのは私たちもわかる。
ちゃんとわかってる。
もう18歳だし、綾那はしっかりしてるし家事もできるから、きっとここで1人残ってもしっかりできる。
でも…やっぱり離れ離れになるのは心配だし、寂しいのよ」

「……たった8か月じゃん。それでもだめなの?
卒業したらじゃだめなの?
寂しいって、私だって友達と離れるのは寂しいよ。
どうして、私の気持ちよりお母さんたちの気持ちが優先されるの?
そんなのおかしいよ」


8ヵ月の寂しさを我慢させるために
あと8ヵ月しか一緒にいられない友達とのこれからの時間を奪われるの?

あと8ヵ月しかないのに。
今年で卒業なのに。
高校卒業したら、みんなバラバラになるのに。



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