ゆめ恋。



***


その日の放課後、私はいったん家に帰って着替えてから、一樹を誘ってスーパーへと向かった。


「なんで俺まで」

「作ってあげるんだからいいじゃん」


帰り荷物重いんだもん、なんて言って半ば強引にね。


今日の夜は一樹のリクエストで麻婆豆腐。
暑いのに、辛いの。汗かきそ。


食料を買って、私たちはさっさとマンションに戻った。
慧とかに見られたらまたうるさいしね。慧には悪いけど。


「そういえばさー」


帰宅後は私の家で夕飯つくり。
一樹は「俺んちくれば」とか言ってくれたけど、やっぱり人んちでご飯ってのは気が引ける…
お米私の分まで使っていいのかな…とか、調味料がどんなのがあるのかまったくわからないしね


「一樹さ、上城千紗って子知ってるよね?」

「……知ってるけど、なに」

「私ちさちゃんと仲良かったんだけどさ
今日ちさちゃんに、一樹から借りたものがあって、それを返したいって言われたんだよね。

だから今度、ちさちゃんと「無理。もういらねぇからって言っといて」

「え!?」


そ、そんな…最後まで話してないのに…


「俺そいつ無理」

「……なんで?」


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