ゆめ恋。



一樹と話しているとあっという間に電車は目的の駅に到着して、ここからは徒歩で向かう。
といってもすぐそこなんだけどね。


「一樹どれ乗りたい?」

「綾那のチケットなんだから、綾那の乗りたいやつでいいよ。
俺どれでも行けるし」

「えー、でも私全部乗りたいんだもん」

「……全部って、バカかよ」

「うるさいよっ!」


そういう私に、一樹はハハッと笑った。

声を出して笑うなんて、珍しいや。
普段、教室だったら声出して笑うどころか笑顔すらないし…
まぁたまに鼻で笑うようなときはあるけど…こういう子供っぽい笑い方するの、珍しいや。


「んなら、とりあえず人気どこを朝のうちに押さえとくか」


笑顔のまま、そういう一樹がいつもより子供っぽくて
いつもと違った一樹に、私はなんだか嬉しくなった。


「よーし、気合いれて乗ろっと!!」

「気合入れるってどこにだよ」


たぶん、慧ならスルーされるようなことも、今日の一樹ならちゃんと拾ってくれる。
今日の一樹はなんだかいつも以上に優しいや。


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