学園ガーディアン
人は人を愛すと言うが
相手が例えば化け物だとして尚、人はその人を愛すと消えるのだろうか_...

触れたものを全て自由自在に変えられ創り出せる能力を持つ私の名前は夜月翠と言う
かつての母と父に頂いた白と黒の革手袋をはめている
伸びきっている銀髪を一つの三つ編みにして後ろで揺らす
スーツを身につけ自室の扉を開ける
目の前に立っている三人の姿
私は微笑み
「似合いますか?」と聞いてみる
兄の和斗は涙ぐみながら頷いた
「勿論、似合っているよ」
そんな兄を見て姉の彼方が溜息を吐く
「和斗、しっかりしなさいよ」
私はクスリと笑った
すると腰に抱きつく幼い弟の奏を私は抱っこする
私を目に映した途端に弟は泣き出してしまい愚図った
「行かないでよ〜〜!!」
腕の中でイヤイヤと泣く弟を私は困ったように微笑みつつ
「では、誰がこの家を護るのですか?」
「…俺?」 
弟は首を傾げて泣くのをやめる
私は静かに頷きつつ弟の額にキスを落とす
「そうですよ」
「…!わかった!」
弟から頬にキスを落とされ、弟は私の腕から降りる
皆で両親の写真の前に立つ
「もうあれから何年も経つのですね」
父と母は言ってしまえば事故死だった
信号無視のトラックと衝突した車に巻き込まれ即死だったそう
皆で駆け付けたときには既に遅くて
だからとは言わないが私は人が嫌いだ
大卒な家族を失って尚人嫌いは進行した
母と父が最後にしたかった事は今でも忘れない
私たち家族へのプレゼントを買った帰り道に起きた事だ
私は自分の力を使ったが、人とは命まで吹き返せられない
これ以上は危険だと兄に押さえつけられ、私は悔しかった
姉の崩れ落ちる姿に酷く胸が痛くなる
弟もまだ幼いながらに理解したのだろう、私のところに走って来て泣いていた
兄もまた涙を流す
私は兄に押さえつけられ弟を抱き締め、涙を流す
葬儀中、私は一人で縁側に座っていた
最後の最後まで父と母は笑っている
とても幸せそうに
空はそんな事すら知らないからいつまでも青く澄んでいる
それが今の私には酷く憎らしくて寂しかった
「翠」
「はい?」
兄に呼ばれ、歩いて着いていく
目の前に広がるプレゼント箱の山
「開けるぞ」
「………御意」
プレゼント箱のリボンを解いていく
中からは様々なアクセサリー・靴・スーツ達が入っていた
「どれだけ買ったんですか…」
呆れつつも寂しそうに笑った
最後のケースに何か挟まっている
私はそれを引き抜き目を見開いた

入学おめでとう!
愛してるわ私たちの愛しい子!
              父と母より

私は震える手でそれを何度も読み返した
「翠」
「………すみません」
我に返り、涙を拭こうとした時に兄に抱き締められる
「泣きたい時に泣けばいい」
「っ、全く、かなわないですね」
声を殺して涙をボロボロと流した
あぁ、両親よ
どうして私たちを置いて逝ったんだ
頼むから
もう一度
貴方方の笑顔と声が聞きたいです
暫く泣いて疲れたのか兄に抱き締められたまま眠っていた
兄は隣で寝ている
私はそっと抜け出して月を見上げる
「明日は入学式ですね」
両手にはめた革手袋を見つめ私は微笑んだ
そして今に至る
「行ってきます、父さん、母さん」
車に乗り、学校の近くに到着する
「じゃあまた会いにくるよ」
車から荷物を下ろして私の頭を撫でる兄に私は頷いた
「はい」 
姉は私に抱きつくと静かに微笑んだ
「元気でいなさいよ?」 
「承知の上です」
弟が私のところに来て抱きついた
「お正月は来てね」
「はい、待っていてくださいね」
そっと頭を撫でて離れる
私はスーツケースを転がして家族と一時の別れを告げた
私は今年から四年間全寮制の学校に入学する
寮は三つのうちでその三つのうちから選択肢が分かれていた
私はドレスの関係の寮に入ったが実は違うらしい
自分の教室を確認して、中に入る
「失礼します」
今日してに一礼して中に入ろうとした時、何かが飛んで来て片手でそれを掴み取った
手に持っていたのは黒板消し
「………」
下らないと思いつつも元の位置へと戻す
「お前すげぇな!名前は!」
「自分から名乗ったらどうですか?」
男はキョトンとして確かにと笑った
「俺は南雲陽!」
「夜月翠です」
一礼すると彼から離れ、席に座る
「お前ってなんか執事みてぇだな!」
「全く違いますよ」 
私は戸惑った声でそう言った
「手袋してるし!敬語だし!」
「だからと言ってそうとは限らないでしょう」
南雲さんは私にやたらと話しかける
非常に困るが放って置こう
人嫌いなのだから話しかけて欲しくない
仲良くする気もない
そんなオーラを出す
「んじゃまたな!先生来るし!」
「ではお静かに」
私は前を向き、静かになる
やたら背後から視線がくるが無視を貫く
先生の話が終わると生徒特有の会話が始まる
私は近付いて欲しくないのに連絡先を勝手に登録された
女子男性関係なく交換され、携帯が重く感じる
私は配られた教材に名前を書き、それを抱えて席を立つ
自室へと向かおうと扉に手を掛けようとして後ろに二歩下がる
扉が勢いよく開き、入ってきた一人の男性
「俺の〜何処だ〜?」
のんびりとした口調の彼にざわつく周りの人
私は興味なさそうに彼から視線を逸らし、出て行こうとしたがさっきの男性に声を掛けられる
「待って〜んーと?女の子」
(なぜ呼び止めた?)
反射的に足を止めて待つ私に男性は嬉しそうに笑った
「終わったから一緒に行こう〜」
私は無言のまま歩いていく
男性は暫く黙り私を抱える
(!?)
「何ですか」
「俺ね、皆月和歌〜」
「皆月さんですね、私は夜月翠です」
抱き上げられたままの状態で自己紹介をする
私が降りようとする度に力を込められた
「何故、抱き上げているのですか」
「んー?気分」
皆月さんの発言に呆れた溜息を吐く
「降ろしてください」
「えー、んー、はーい」
ゆっくりと降ろしてもらい、足を地面につける
スーツのヨレやシワを直し、その場から走り去った
「これくらいで良いでしょうかね」
「あはは!みーちゃんて足速いねぇ!」
背後から走ってくる皆月さんに目を微かに見開いて驚く
そして覆いかぶさるように抱き付かれる
「何故ですか…」
「俺もこの寮だもん」
(意外ですね)
「俺髪の毛いじるの好きだから〜ヘア系〜」
確かに皆月さんの髪の毛はキラキラとして艶々としていてとても綺麗な色をしている
私がそっと皆月さんの髪に触れると皆月さんはキョトンとしている
「どしたの〜?」
「いえ、とても綺麗だと思ったので」
素直な言葉を言うと皆月さんは頬を赤くした
(風邪ですかね?)
私はそっと皆月さんの額に触れる
「熱は特に無いですね」
「風邪じゃねぇし〜」
(では何でしょうか?)
私は首を傾げつつも頷いた
(何故でしょう、皆月さんは苦手だ)
掴めないし、何より少し人と違うから
「ねぇ〜みーちゃん」 
「何ですか?」
少し呆れたような顔を向ける
皆月さんはニコニコとしていた
一体何なんだ?
「みーちゃん、好きかも」
「………はい?」
前言撤回
苦手より嫌いになりました
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop