「指輪、探すの手伝ってくれませんか」
「ちょ、え、まっ、みっ!」
引っ張れば抵抗なくついてきたのは了承と受け取ってよいだろう。短い音を何個か吐き出している志乃宮さんをベッドに突飛ばし、うつ伏せに倒れた彼に掛け布団を掛けてから自分もベッドへと潜り込む。
枕が二つあるのはきっと、以前付き合ってた人のものなんだろうなぁなんて思いながら、ふわりと香る柔軟剤に意識を向けていれば、真横で倒れていた志乃宮さんが突然勢いよく起き上がる。無論、掛け布団は剥ぎ取られた。
「……ちょっと、志乃宮さん、」
ちらりとヘッドボードに置かれているデジタル時計に目をやれば、暗さに慣れつつある視界の中で日付が変わって二分経ったという表示が見える。
明日も仕事だし、そろそろ本気で寝たい。
何なんですかの意味を存分に含ませたため息を吐き出して、同じように起き上がれば、真横の彼はゆっくりと顔をこちらへと向けた。
「……ごめんなさい、あの、僕、」
「……何ですか?」
「みっ、御来屋さんと、同じベッドなんて、その、がっ、我慢、出来ない、です」
「…………は?」
我慢、とは?
秒ではじき出した結論に、ふむ、と音のない相槌をうつ。そういえば、前回の志乃宮さん的我慢出来なくて問題の際は酔っ払っていたからだった。どれくらい酒をあびたのかは知らないけれど、べろんべろんだった。そして今日も赤ワインを飲んでいる。呂律が異常を起こすほどではないみたいだけれど、酔うには酔っているのだろうか。
「あのっ、あの、だから、やっぱり、僕」
「……あー……ああ、シたい、って事ですか」
「しっ、え、う、あ、」
「……シます?」
「いいんですか?」
カマを掛けようと思ったわけではないけれど、食い気味に返答され、少しひく。
あれ?この人こんな欲望に忠実だったっけ?
いや、酔うと忠実になるのか。なるほど。
「そこはダメですって言わないんですね」
「……まぁ、あの、御来屋さんがいいなら、触りたいですし、その、きっ、キスとか、その、」
「セックスですか?」
「うああっ!」
しかしそういった方面を明け透けに話す事にはどうやら免疫がないらしい。両手で顔を覆って俯き気味で何やら呻いている。
肉食なのか、初心なのか。
「やっぱり、やめ」
「シたいです」
両方か。器用だな。