男の娘の名探偵、シャルロッテ・ホームズ
近寄る



ハルは、膝丈のピンクのワンピースに編み込みブーツを履いた格好で、町を歩く。肩にかけられた小さな茶色のショルダーバッグには、財布ともしものために、と銃が入っていた。

「……ふぅ」

小さい頃から女装が趣味だったハルは、久しぶりの女装に、正直胸が高鳴っていた。

男子から「女装が趣味って、気持ち悪~」と言われ、殴られたハルは、女装するのを止めてしまい、男性に怯えるようになってしまった。

「落ち着かなきゃ……」

久しぶりに女装が出来た嬉しさと、これからの不安が混ざり合って、ハルは複雑な気持ちになってしまった。

落ち着いていこう、僕は頼られてる、と自分に言い聞かせながら、ハルは店に入る。

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

店に入ると、女性の店員に話しかけられて、ハルは安心した。

「1名です」

そう返して、ハルは案内してもらった席に座る。メニュー表を見るふりをして、次の行動をどうしようかと考えた。

「……そこのお嬢ちゃん」

「私、ですか?」

誰かに声をかけられたハルは、出来る限り声を高くして、女性の声を出す。

「そうだよ。君、どこから来たの?」

ハルと向かい合うように、不良の見た目をした男性がイスに座った。その姿に、ハルの頭は真っ白になる。ハルは、特に不良がダメなのだ。
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