❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀
彼女は―――今、車の中に戻り、一人で帰ろうとした。小さい頃から、友達が多い方ではなかった。自分にとって、友達とは何か?―――それは、自分にとって、かけがえのない存在である。自分はいつも、一人だった。一人が一番楽で、友達とは距離を置いている所だった。だけど、智也に会ってから、仕事をするようになってから、人間関係も重要な事だと、学ぶ事ができた―――。ベーカリーとパティスリーを好きに出来るし、頼りたかったら、仲間に頼る事が出来る筈である。何故、2人で―――もっと、仲間を増やせばいいのに―――。ある日、両親に叱られてる事があり、『―――貴方・・・もっと、周りを見なさい・・・』と言われ、友達を増やせと、言われていた。
智也と過ごす時間は、両親とは違い、姉にも言われた事だが、喧嘩しながら、人は成長できる。そう言われていた。喧嘩しながら、人は仲良くなれる筈で、菜緒はすぅ、と空を見上げた―――。
その時、オリオン座と北斗七星と、カシオペアの星座が見え、彼女はじわっと涙を浮かべる。ポロポロと涙が零れ落ち、ふと、『―――貴方にとって・・・大事なのは・・・何?』と聞こえた。
その時、彼女はすぅ、と目を開けると、勢いよく、智也を探しに立ち上がり、そのまま探した。
『―――失いたくない・・・友達・・・一緒にいたい・・・男性・・・それを、大事にしなさい』
彼女は波が零れ落ち、そのまま走っていた。言いたい事が、沢山あり、智也を失う訳にはいかない。だから、走る―――。このまま走り続け、あちこち探していた。だけど、予定外の事がある。
そこには―――薫と、智也の姿があり、彼女は思わず立ち止まった。智也は怖い顔をしていた。
『―――黙れ・・・俺を振ったんじゃないのか?あの時―――。この嘘つき野郎-――。俺はあの時の事、忘れはしない―――。』
『―――あら・・・貴方・・・そんな事を言って良いの?彼女・・・見てるわよ・・・』
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