❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀

第七章-――智也の記憶(エピローグ)-――

―――
―――それから、菜緒は智也のいる、大阪の病院に向っていた。自宅から―――三十分程掛かる。
車の中では、一緒に子供達が付いている。彼は山川と名乗っているが、智也の父親でもある。菜緒は―――それは、知っている事で、病院まで連れて行って貰う事にした。大阪の浪花にある病院で、まだ出来たばかりの、新しい病院でもある。病院は大学病院で、智也は足を手術した―――。
脚の骨は見事にくっついたが、歩くのに、ぎこちないし、この先、復職は難しいと言われていた。
彼は今、足にギブス固定し、痛くて、痛くて、身体が―――脚が動かせない。一体なぜ―――??
『―――貴方は・・・ご自分が誰だか、分かりますか?』
金田美紅と言う女医さんは、彼の問診をした。智也は泣きそうになり、『―――わからない。』と言った。智也はずっと好きだった人を思い出せなくなった。それは家族の問診で分かった―――。
智也は菜緒の方をみやると、ドクンと、心臓が脈打ち、『―――うぁぁぁぁぁ・・・』と叫んだ。
『ーーーどうしたの?』
『―――あ・・・足が・・・足が・・・い、たい・・・』
痛み止めの薬を貰っているが、『―――まだ・・・効かないのね?』と難しそうに言った―――。
『―――貴方の足の骨は・・・車に乗っていた、自分の御父様が、運転して・・・出来た傷よ。貴方の御父様は、御二人の結婚を良く思っていなかったのかしら?』と問い質した。
―――そ・・・そんな筈は・・・
あの人の車に・・・あの時は、乗っていなかったは・・・それに―――。
あの事を、思いだした。
< 202 / 212 >

この作品をシェア

pagetop