やがて春が来るまでの、僕らの話。


「なんでって、お前が家にいないから心配してみんなで捜し回ってたんだよ」

「うそだ」

「うそじゃねぇって」

「絶対うそ!」


自分なんかを心配するわけないとでも思ってんのか、全然信じてくれない。

だからハナエの肩を掴んで、無理矢理こっちを向かせた。


「うそじゃない」

「、…」


肩を持ったまま目を見て言うと、ハナエの瞳が滲んでた。


滲む瞳がキラキラしていて。

キラキラした瞳から涙が零れそうになった瞬間、ハナエの表情がキュッと歪んだ。


「もうやだっ……バカバカバカ、柏木くんのばか!」

「痛っ、ちょ、」


ヤケクソにでもなったのか、俺の体をバシバシ殴りつけてくる。

結構力強くて痛いんだけど、でも見えたハナエの顔がやっぱり泣いていて。


「バカバカバ───」


殴りつける手をパシッと掴まえた。

掴まえてから数秒、俺たちに無言の時間が流れる……



「………」

「、」



シンとした暗い空から、静かに雪が降り出した。


静かに、シンシンと雪が降る。



普段の神社ってこんなに静かなんだね。


聞こえちゃいそうじゃん、心臓の音。


どっちの音かなんて、教えないけどね。


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