やがて春が来るまでの、僕らの話。



「なに言われた?」



クラスの女子に、恐らくムカデ女に、一体なにを言われたのか。

それを確認した途端、手を掴まれたまま俯くハナエの肩がヒクヒク震えだした。



「…………」



なんでかな、コイツが泣くのは見たくない。

俺は陽菜の彼氏だし、コイツは志月くんの彼女だし、そんなの分かってるのに。


これって浮気になんのかな。

浮ついた気持ちがないなんて、この状況でそんなこと言えんのかな。



だってもう、こんなに震えてる肩を、



抱き締めずにはいられない……




「……ごめん」




ごめん、



ごめん、



陽菜、志月くん。



ごめん……





大晦日の夜みたいに、ハナエのことを抱きしめた。

でもあの日と違うこと。

潰れるんじゃないかってくらい、苦しいんじゃないかってくらい、腕に力が入ってる。



これが誰かを傷つけることだとしても、もういいや。



だってコイツとなら、


地獄の底まで行ける気がする……


< 101 / 566 >

この作品をシェア

pagetop