やがて春が来るまでの、僕らの話。
「なに言われた?」
クラスの女子に、恐らくムカデ女に、一体なにを言われたのか。
それを確認した途端、手を掴まれたまま俯くハナエの肩がヒクヒク震えだした。
「…………」
なんでかな、コイツが泣くのは見たくない。
俺は陽菜の彼氏だし、コイツは志月くんの彼女だし、そんなの分かってるのに。
これって浮気になんのかな。
浮ついた気持ちがないなんて、この状況でそんなこと言えんのかな。
だってもう、こんなに震えてる肩を、
抱き締めずにはいられない……
「……ごめん」
ごめん、
ごめん、
陽菜、志月くん。
ごめん……
大晦日の夜みたいに、ハナエのことを抱きしめた。
でもあの日と違うこと。
潰れるんじゃないかってくらい、苦しいんじゃないかってくらい、腕に力が入ってる。
これが誰かを傷つけることだとしても、もういいや。
だってコイツとなら、
地獄の底まで行ける気がする……