やがて春が来るまでの、僕らの話。
「あ、いた!」
電話を切って数分が経った頃、陽菜と志月くんと律くんが雪の中を走ってきた。
ハァハァと肩で息をしている様子は、ついさっきまでの自分を見ているようだ。
「ハナエ~!よかった、見つかって」
「ごめんね、心配かけて」
「ほんとだよ!心配したんだからねっ」
「うん、ごめんなさい…」
時刻は夜の七時過ぎ。
空は当たり前に真っ暗で、神社は相変わらず静けさが漂っている。
なんの変哲もない夜なのに、俺の胸はザワザワと嫌な音が止まらなかった。
「明日朝迎えに行く。一緒に学校行こう」
ここから先は彼氏の役目。
志月くんの声にそう言われた気がして、合ってもいない目をふっと逸らした。
逸らした先は真っ暗で、十五歳の俺には暗すぎた……
もう一度だけ。
もしも許されるのならもう一度だけ、この時に、この冬に戻りたい。
そしたら全部やり直して、全部全部全部、最初からやり直して。
それが叶えばきっと今だって、あの頃と変わらずに笑っていられるのに。
今はもう、あいつがどこで何をしてんのかも、生きているのかすらも、なんにも知らない。
どうやったらほんとの地獄に行けるのかもわからずに、消えない痛みを連れたまま、
俺は今日も、
死んだように生きている……