やがて春が来るまでの、僕らの話。
若瀬くんが教室のドアを開けようとしたとき、中から聞こえたのは昨日と同じ女子の声だ。
手を止めた若瀬くんを見上げると、彼は少しだけ開いたドアの向こうをジッと見ていた。
「もう転校したんじゃない?」
「それまじウケる」
「じゃあ机とか片付けてあげなきゃね」
「ちょっとー、来たらどうすんの?いじめになるじゃん」
「転校したかと思ったーって言えばよくない?」
「あはは、確かにー」
「つーかとっとと転校してくんないかなー」
「、…」
ああ、やっぱりダメだ…
中から聞こえる声に、強くいたはずの気持ちが怯んで、
ガラガラガラッ!!
「っ!」
私の思考を消し去るくらいの勢いで、若瀬くんがドアを叩きつけるように押し開けた。
教室中に響いた音に、視線が一気に集まってくる。
私の手をグイッと引いた若瀬くんは、声も掛けられないくらいの苛立ちオーラを放って歩き出す。
真っ直ぐ向かった黒板前で、立ち止まったかと思ったら……
その足は、そのままの勢いで教卓を蹴り飛ばした。
ガッタァァァン!!!