やがて春が来るまでの、僕らの話。
机やイスを巻き込み倒れた教卓。
シン…となった教室内で、若瀬くんは言う。
「言いたいことがあんなら直接言えば」
低すぎるその声に、クラス中息を呑むような空気が流れた。
「え、いや…」
「別に、…」
「ねぇの?だったら俺が言わせてもらう」
私の手首を掴む手に、ぎゅっと力が込められて……
「お前らがなに言おうとコイツは転校しねぇ。嫌ならテメェらがどっか行け」
「、…」
「机なら俺が片付けといてやるからよ」
「、、、」
注目を浴びる若瀬くんは、女子グループを見下ろしてとどめを刺す。
「あとさ。あんたら全員ケバイよその顔。ムカデみてぇ」
「は!?」
言い終えた彼は、私の手を引いて窓際後ろの席まで連れて行ってくれた。
なんか……さっきまで想像していたのと違う意味でみんなからの視線を感じる。
そんな中で小さく聞こえてくるのは、若瀬くんを賞賛する声だ。
「確かにあいつらケバイよね」
「俺も思ってた」
「さすが志月くん、よく言ってくれたな」
少しずつざわつきが戻ってきた教室内で、隣の席の男子がひと言。
「かーっこいい。志月くん」
興味がなさそうな柏木くんは、足を組んで笑ってた。