やがて春が来るまでの、僕らの話。
噂話は一ヶ月も経てば、みんなが飽きて自然と消えた。
ケバかった女子のグループは、若瀬くんのひと言が利いたのか若干、ほんとに若干、心なしか化粧が薄くなった気がする。
いや、やっぱり変わってないかな。
最近校内は少し静かだ。
三年生の授業が終了して、先輩達は自宅学習期間に入っているから。
そっか、来週はもう卒業式か。
倉田先輩もいよいよ卒業だ。
短い間だったけど、なんだか長い間お世話になった気がするな。
「体育だるいね~、ハナエ」
赤いジャージに着替えたあと、陽菜と一緒に体育館へ移動する。
体を動かすのは好きだけど、体育はあんまり好きじゃない。
バスケやバレーの団体競技になるとそれは尚更。
チームワークを作れるほどの友達がいるわけでもないし、私たち、結局女子の中では孤立しているから。
「あ、ひでだ~!」
体育館の壁にもたれて座っている柏木くんに、陽菜は大きく手を振った。
だけど柏木くんはぼぉっとしていて、全然こちらに気づかない。
「考え事かな?」
近くにいるわけでもないから、聞こえていないのかもしれない。
そう思ったけど……陽菜の顔が次第に青ざめていくのが見えた。