やがて春が来るまでの、僕らの話。



通夜ではクラスメイトが声をあげて泣いていた。

目を真っ赤にして泣き崩れていた。

私は涙が出ない。一粒も出ない。

だって本当に陽菜がもういないのか、それが分からなくて。

もしかしたら全部夢で、もしかしたらどこかに隠れているだけかもしれない。

だって柏木くんも若瀬くんも倉田先輩も、泣いていない。

本当に陽菜がいなくなったら、真っ先に彼らが泣くはずでしょ?

だからきっとこれは夢。

悪い夢を見ているだけ。

だから涙は出なかった。

だけどクラスのみんなは泣いている。

ねぇ、どうして泣いているの?

そんなに悲しいことがあったの?



ねぇ私、涙が出ないよ……








お通夜を終えて家に帰ると、手紙が届いていた。

封筒の中には便せんと、一枚のおみくじ。



「……大吉」



───“……大吉がいいなぁ”



その手紙は、陽菜からだった……

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