やがて春が来るまでの、僕らの話。
顔を伏せたお母さんは、前より少しだけ痩せて見えた。
こんな小さな町の病院じゃ治らない病気なのか、私の胸は不安だらけになっていく。
だけど同時に、この町にはもう居るべきではない。
そう思う気持ちもあって、どうしようもなく複雑な思いに駆られた……
「……じゃあ早く、引っ越さなきゃね」
高校一年生、冬。
私たちは、深すぎる傷を負った。
あの日、まだ高校生だった私たちに起こった、あまりにも重い悲しみ。
それは言葉に出来るほど簡単なものでもなくて、誰かに聞いてほしくても伝わるようなものでもない。
思い出に変えたくても、変えられない。
たった三ヶ月だけだった。
みんなと過ごした期間は、たったのそれだけ。
だけど胸に残るあの日の傷が、今もズキズキ音を立てている。
苦しくて、悲しくて、辛くて、怖くて。
希望すら見えない。
光すら見えない。
───“だけど『希望の光』は、何気ない顔して現れる”
あの日みんながくれた『希望の光』は、今はもう、跡形もなく消えてしまった。
私たちは傷を負った。
それは高校一年生の冬のこと。
その冬が春へと足を進める春休み。
私は誰にも別れを告げず、母とこの町を出た。
そしてもうすぐ、陽菜の死から七年が経とうとしていた。