やがて春が来るまでの、僕らの話。






「ハァ、ハァ、…」


男がやっと立ち止まったのは、五分くらい走った先にあるビルの前だった。

走るのなんて久しぶりすぎて、息が苦しい……


「……パスタBAR?」


ビルの横に立てかけられた看板には、『1階、パスタBAR』と記されている。


飲食店?

パスタでも奢ってくれるんだろうか?



キィー……


「どうぞどうぞ、入って」


ドアを開けてくれたから、恐る恐る店の中に足を踏み入れる。

外から見るより意外に広い店内は、薄暗いオレンジのライトが灯っていた。

カウンターとテーブル席に分かれていて、小さく流れるBGMが大人な雰囲気を醸し出している。


「ここ座って」


案内されたのは、カウンターの一番端っこ。

目の先には色んな種類のリキュールが並んでいて、いかにもオシャレなバーって感じだ。


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