やがて春が来るまでの、僕らの話。


「お酒飲める?ハタチ越えてるよね?」

「……一応」

「何歳?」

「22……」


遠慮がちに答えると、男は「俺の一個下だね」って嬉しそうに笑った。

妙にスタイルが良くて、妙に人懐っこいこの男はなんなんだろう。

笑ったあとは真剣な顔でメジャーカップにリキュールを入れ、私にはよく分からない液体を混ぜ合わせシェーカーを上下に振っていく。

シャカシャカと音を立てるその様子を、私は食い入るように見た。


……かっこいい。



「はい、どうぞ」


スっと差し出されたのは、オレンジと黄色のグラデーションが綺麗なカクテル。

中には赤とピンクの花びらが散りばめられていた。


「すごい、キレイ!」


思わず飛び出たその声に、男はまた嬉しそうに笑った。


「これ、君をイメージしたカクテルね」

「私?」

「そう、題して、エンジェルスマイル!」

「……」


思わず顔が引きつった。

だってエンジェルスマイルって。

天使の欠片もなければ、最近笑った記憶すらない私ですけど。

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