やがて春が来るまでの、僕らの話。


「どうぞ召し上がれ」

「じゃあ、いただきます…」


でもまぁせっかく作ってくれたのだからと、ひとくち口に入れてみる。


「美味しいっ!」


その味は想像していたよりもずっと甘くて、苦いお酒が苦手な私にはピッタリだった。


「でしょ?君をイメージしたんだから、美味しいに決まってるよ」


照れもなくそう言う男の方がエンジェルスマイルに見えるけど。

だってさっきから、笑顔が眩しすぎる……。



「お待たせいたしました、カルボナーラでございます」


ホールの従業員さんが運んで来てくれたカルボナーラは、目の前で美味しそうな匂いを漂わせる。

これ、本当に食べていいのかな?


「ここのパスタすっごく美味しいから、どうぞ召し上がれ」


遠慮している心をもう一度読むように、男はグラスを拭きながら言った。


「じゃあ、いただきます……」


久しぶりにパスタを食べた。

最近はファーストフードばっかりだったから、久しぶりすぎて感動しちゃう。



「……美味しい」



温かい味がした。

家でお母さんが作ってくれる料理みたいな、温かい味。


なんでだろう、少し泣きそうだ……


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