やがて春が来るまでの、僕らの話。
「俺はいないよ」
「そうなんだ?」
「モテモテなのにね、もったいない」
ほんともったいない。
この感じじゃ、相当モテそうなのに。
「三人は昔からずっと一緒なの?」
「そう、幼稚園からず~っと一緒だよ。いわゆる幼馴染ってやつ」
小さな町だから幼稚園から一緒っていうのは当たり前なんだろうけど。
でもこの三人は特別仲がいいんだろうなって、見ていてそれが伝わってくる。
「あと、三年の律くんも家が近所で幼馴染なの。うちらのお兄ちゃん的存在」
「律くん?」
「ほら、昨日カッシーにゲームの返却頼んできた」
若瀬くんの言葉で、その人物を思い出す。
「あ、三年生なんだ?」
「まぁ律くんに至ってはあと三ヶ月で卒業で、遠い所の大学行っちゃうんだけどね」
そんな柏木くんの声に「遠くに行っちゃうの寂しいな~」って、陽菜が少し落ち込んでいる。
そっか、きっと私みたいにこの町に越してくる人より、この町から出て行く人の方が多いんだろうな。
漠然とそう考えているとき、資料室のドアが開いた。
「お、噂をすれば」
ドアが開く音に視線を向けると、入ってきたのはたった今噂になっていた人物だ。