やがて春が来るまでの、僕らの話。
鞄を置いて、制服のまますぐにもう一度家を出た。
薬局、どこだっけ……
「うぅ、寒い…」
家の暖かさを感じたあとだから、外に出るとさっきよりも寒さを感じる。
北国育ちじゃない私にとって、この寒さは耐えられない。
早く買い物して早く帰ろうって思うのに、お店の場所がイマイチわからなくて不安。
とりあえず商店街の方に適当に歩いてみようかなって、足を進めていると。
「あれ、なにしてんの?」
歩き出して数分、聞き覚えのある声が背中に聞こえた。
振り向いて立っていたのは、制服姿の柏木くんだ。
さすが小さい町、こんな偶然はきっと偶然のうちに入らないんだろうな。
「なに、迷子?」
「違う、薬局探してるだけ」
「それ迷子じゃん」
「違うから」
「ふーん、じゃあ場所教えなくても行けるんだ?」
「え"」
「じゃあね~」
ひらひらと手を振り歩きだすその腕を、焦って掴む。
「なに?」
「ま、迷子じゃないけど」
「うん?」
「一応、念の為、場所教えてもらおうかな」
「素直じゃねぇの」
クフフっと笑った柏木くんは、そのまま私の方に振り向いた。