やがて春が来るまでの、僕らの話。
「こっち」
「え?」
「連れてってやるよ、教えたところで迷いそうだし」
「なにそれ、失礼!」
「ついてこねんなら置いてくよー」
「…っ~」
歩き出した柏木くんの後ろを、焦って追いかける。
隣を歩いていいのかわからなくて、少しだけ後ろをついて歩くけど……
微妙な距離が、なんだかすごく恥ずかしい。
「……柏木くんだって素直じゃないじゃん」
「俺?」
「ほんとは最初から連れてってくれるつもりだったでしょ」
十五歳の子供でもわかる。
遠回りの素直じゃない優しさ。
そしてそんな優しさに照れてしまうのは、私がまだ子供だから……
「俺ってば親切だからねー」
得意げに笑う柏木くんを、斜め後ろからこっそり見ていた。
夕日が段々沈んで、冬の澄んだ空気を赤く染めていく。
「……柏木くん、真っ赤」
夕日に染まった彼を見て、思ったことが口から飛び出た。
私の声に少しだけ振り向いたあと、夕日のせいで真っ赤な柏木くんは、笑って言った。
「照れてるからね、これでも」
「え?」