やがて春が来るまでの、僕らの話。


「南波くんはいつからこの街に住んでるの?」

「俺は生まれたときからずっとここ」

「そうなんだ」


生まれた場所も育った場所も違うのに、今こうして一緒にいる。

そう考えると、人と人との出会いの不思議さを感じずにはいられなかった。


「私はね、7年前にこの街に来たの」

「うん」

「この街に来て、お母さんが死んじゃって、それからはずっと1人で生きてきた」

「うん」

「なんの為に生きているのかも分からなくて、別にいつ死んでもいいやって思うくらいの感じで」

「うん」

「頼れる人もいないし友達もいない。私が死んでも誰も気づかないだろうなって、いつも考えてた」


7年間、私はどうして生きていられたんだって、不思議に思うくらい。

生きるために必死だったわけでもないのに、どうしてこんな風にここにいるんだろう。


「本当にいなかった?」

「ん?」


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