やがて春が来るまでの、僕らの話。


「頼れる人とか友達とか、本当に誰もいなかった?」

「………うん」


いなかったよ。

本当に誰も。


「じゃあなんで律くんは、ハナエちゃんのことこんなに助けてくれてるんだろう?」

「え?」

「普通はここまでしないでしょ。一緒に住むなんて、よっぽどのことがない限りしない」


それは、そうだけど……


「頼れる人だったんじゃない?律くんは」

「……」

「きっとハナエちゃんが助けを求めたら、律くんはもっと早く助けてくれたんじゃないかな」


そうかもしれないけど……



「ねぇハナエちゃん。頼れる人とか友達とか、律くんの他にもいるんじゃない?」



頼れる人。


友達……?



違う。


やめて。


違う違う違う。



「本当はその人たちに会いたいんじゃない?ハナエちゃんも」



やめてよ……


会いたくなんかない。


もう二度と会いたくなんかない。


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