やがて春が来るまでの、僕らの話。



「もし今頭に誰かが浮かんでるなら、きっとハナエちゃんは1人じゃないと思うよ」

「……っ」




本当は、悔しいくらに頭に浮かんだ。


悲しいくらいに頭に浮かんだ。


思い出す必要もないくらい、それは鮮明で。


忘れたことがないくらい、本当は常に頭にあって。


消したくても消せない人たち……




ポタポタと涙が落ちる時、いつも頭から離れない。


1分だって1秒だって、本当は忘れたことなんてない。



だって本当は、



本当は……




「………会いたい」




会いたいよ。


会いたい。



本当は7年間ずっと、私は……




「っ……柏木くんと若瀬くんに、……会いたい、…」




泣きだした私を見て、南波くんは絵を描きながらふふっと笑った。



「ハナエちゃんがそう思っていれば、いつか必ず会えるよ」



分からないけど、あの日、おみくじのキセキを起こしてくれた南波くんが言うのなら、


いつか本当にそんな日が来るんじゃないかって、



心の底から、そう思えた……


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