やがて春が来るまでの、僕らの話。
【倉田side】
「ただいまー」
夜8時頃家に帰ると、玄関にいい匂いが漂ってきた。
なんだ?この旨そうな匂い。
「あ、おかえりなさい」
キッチンへ向かうと、ハナエちゃんが立っていた。
「なんか作ってんの?」
「ただ居候するのも悪いから、せめてご飯ぐらい作ろうと思って」
まだ気を遣ってるのかって、逆に申し訳なく思ってしまう。
でもご飯を作ってくれるのは、正直有難かったりする。
「カレー?」
「料理なんて高校以来だから、あんまり自信ないんだけど……」
「いやすっごい腹ペコだから有難すぎるよ」
実はグーグー鳴ってるお腹を押さえ、すぐにスーツを脱ぎに向かった。
部屋着に着替えてリビングに戻ったら、テーブルにカレーとサラダが並んでる。
「いただきまーす」
大きくひと口、カレーを頬張る。
「んめぇー」
思わずおかわりしちゃったりする俺を見て、ハナエちゃんが嬉しそうに笑ってる。
「よかった、カレーもまともに作れなかったらどうしようかと思った」
「めちゃくちゃうまいよ」
ハナエちゃんは小食なのか、俺より一回り小さいお皿を使ってる。
いや、もしかして遠慮してる?