やがて春が来るまでの、僕らの話。



「陽菜以外の女子と二人で歩くのなんて、初めてだし」

「あ、そっか」


そうだよね。

小六から付き合ってるんだから、そうだよね。


「んで、お前はなんで真っ赤なの?」

「!」

「もしかして俺のせい?」


からかうように笑う柏木くんに、
本当に顔が火照ってくるのを感じた。


ドキドキした。

笑えないくらい、ドキドキした。



「夕日のせいに決まってるじゃんっ」







今でもはっきりと覚えている。

夕日に染まる真っ赤な空。

口から漏れて消えていく白い息。


真っ赤な手袋をする手持無沙汰な手が、二人きりの状況に緊張するようにもじもじしていて。



十五歳。

早いのか遅いのかはわからないけれど、初めて男の子と二人きりで外を歩いた。


十五歳。

振り返る今ならわかる。


この時、この瞬間、


少し照れながら斜め前を歩く彼が、どうしようもなく目に焼き付いて



私の中で、特別な男の子になったんだ……


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