やがて春が来るまでの、僕らの話。
「遠慮しないでたくさん食べなよ?」
「あ、うん」
「って、俺が作ったみたいだな」
「あはは、確かに」
こうして誰かと食卓を囲むのは、やっぱり楽しい。
1人きりの暮らしに慣れてたから、ただいまとか言えるのも新鮮だし、家に帰ってご飯が待ってるのってやっぱいいな。
「なんか新婚みたい」
「え?」
「あ。やべ」
思ったことがつい口から出てしまった。
赤面しそうな顔を隠したいけど、隠す場所なんてあるわけもない。
「いや、ごめん、口が滑った」
なんとなくこっ恥ずかしい空気が流れて、気まずい。
そんな空気を変えるように、ハナエちゃんが次の話を切り出してくれた。