やがて春が来るまでの、僕らの話。



「あの……仕事、決まらなくてごめんなさい」


目を伏せる様に、申し訳なさそうな謝罪が届く。

そんなこと気にしなくていいのに、やっぱり相当気遣ってんのかな。


「まだ探し始めたばっかじゃん?」

「でも……」

「俺なんて就活のとき何ヶ月もかかってやっと決まったくらいだし、そんな焦らなくていいよ。ほら、食って食って」

「……うん」


ハナエちゃんがカレーを食べ出したのを見て、俺も続きを食べ始める。


毎日こんな風にカレーが食べられるなら仕事なんてしなくていいよって言いたいとこだけど、それじゃあ彼女の為にはならない。


口先まで出たその言葉をグッと呑み込み、2皿目のカレーを完食した。




そして、こんな日が1ヶ月半続いた頃……

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