やがて春が来るまでの、僕らの話。


季節は真冬、2月。

18時、就職活動からの帰り道、私は右足を引きずっていた。


「イタタ……」


面接に行く時にいつも履く、黒いパンプス。

アキレス腱のところが靴ずれを起こし、赤く血が滲んでいる。

いつまで経っても履きなれないこの靴は、きっと私の足に合ってないんだ。


「痛っ……」


想像以上のその痛さに、もうこれ以上歩けそうにない。

どこかで足を休ませなきゃ……。







キィー……


どうにかパスタBARまで歩き、ドアを開けて店内に入る。


杉内くん、いるかな?

覗くように店内を見ると、1つの笑顔と目が合った。


「いらっしゃい」


よかった、いた。

右足を庇うようにカウンターへ歩いて行くと、彼はすぐ私の異変に気づいてくれた。


「どしたの、足」

「靴ずれしちゃって」

「あちゃー。絆創膏持ってくるからちょい待ってて」


そう言いながら、杉内くんは店の奥に消えて行った。

喉渇いたからなにか飲んで帰ろうって、メニュー表に目を通す。

お金はあんまりないけど……でもお水だけなんて、さすがに申し訳なさすぎるから。

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