やがて春が来るまでの、僕らの話。


「ホールの子が急に辞めることになってね、募集するって店長が言ってたの」

「そう、なんだ」

「もしやる気あるなら今店長いるから、面接してみない?」

「え、今?」

「早い方がいいでしょ?」

「うん……」

「よし決まり!じゃあ店長呼んでくるからちょい待ってて」



話がドタバタ進んでいって、私は急遽面接を受けることになった。


店長さんは40代のダンディーな男性で、杉内くんいわく、かっこいいクマさん。

皆にもクマさんって呼ばれて慕われているらしい。


そして面接をすることたったの10分、まさかの内定をもらえた。



「じゃあ来週から来てもらおうかな」

「はい、よろしくお願いします!」




人の出会いは不思議なものだ。

あの日あの夜杉内くんと出会わなければ、私の人生はまったく別のものになっていた。

杉内くんに出会ったから律くんと再会して、杉内くんに出会ったから南波くんと出会えて、杉内くんに出会ったから仕事まで紹介してもらえて。


重なるいくつもの偶然が、今はやっぱりキセキみたいに思える。


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