やがて春が来るまでの、僕らの話。


「律くん」

「ん?」


2人で万歳をし終えたあと、彼女は感極深い表情で俺を見上げた。


「ほんっとうに、ありがとうございましたっ」


未だに目をキラキラさせている彼女の表情は、再会したときとは全然違う。

あのとき、高校時代よりも小さく見えたハナエちゃんだったけど、今はちゃんと未来を見て歩き始めた姿に見える。


「俺はなんもしてない。ハナエちゃんが諦めずに頑張った結果だよ」


謙遜でもなんでもなくて、本当に俺はなんにもしてない。

もっと色々してやりたかったのに、結局仕事も忙しくて、なにも手伝ってやることができなかったから。


「律くんがいてくれたお陰だよ。全部全部、律くんがいてくれたから変われた」

「……」

「だから本当にありがとう!」



笑顔で言われたありがとう。

それはあまりに純粋で、無垢で。

彼女の傷と矛盾しているその真っ直ぐな笑顔は、俺の目に焼きついた。



「うん、じゃあ、どういたしまして」



なんでか俺も泣きそうだ。

泣かないけどさ、なんか胸に込み上げてくる。



ねぇ陽菜。

ハナエちゃんはちゃんと一歩ずつ、前に進んでるよ。


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