やがて春が来るまでの、僕らの話。



「とりあえずお祝いに、ちょっとだけビールで乾杯しよっか」

「じゃあ私取ってくる」


嬉しそうにキッチンへ駆けて行くハナエちゃんの後を、なんとなく追っていく。


冷蔵庫からビールを出して、分かりにくい戸棚の上にしまってあるグラスに手を伸ばす姿が見えた。

背伸びをして1つグラスを取って、もう1つに手を伸ばす横から、代わりにそれを取ってあげる。



「あ、ありがとうございま───」




こっちを向いたその顔に、なんでだろ。



無意識に、不意打ちみたいなキスをしていた。



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