やがて春が来るまでの、僕らの話。
音のないこの部屋に、2つの心臓の音。
そんな音に気づかされるのは、自分の気持ち。
待って、俺、いつから。
いつからハナエちゃんのこと……
まだ高校生だった頃、俺達の未来がこんな風に繋がるなんて想像もしていなかった。
きっと平等ではない幸せの数。
だけどもし、もしも本当に幸せが平等に訪れるんだとしたら。
俺に埋めることはできる?
きっと物凄く足りない彼女の幸せの数を、俺に埋めることはできるかな?
「あのさ、ハナエちゃん……」
「……」
「……今日、一緒に寝よっか」
自分からキスをしたくせして、恥ずかしくて目を見れなくて、だから彼女がどんな表情なのかもわからないけど。
想いはもう、俺の中では確かなものに変わっていた。
いつからなんて分からない。
どうしてなのかも分からない。
でも確実に、今、胸の奥にしっかりと確認できたから……
ズルイんだ。
だって彼女はこの家にいること自体に気を遣っているから、一緒に寝るって要望を断れるわけがない。
分かりきってて聞いてんだから、俺も相当悪い男だ。
「あの」
「大丈夫、なんもしないから」
何かをするつもりはない。
彼女が体を売ってた過去がある以上、そんな軽く体に触れられるわけがない。
いや、あんま自信はないけど。
でも今はただ隣に、ただそばに、いたいだけなんだ……