やがて春が来るまでの、僕らの話。



音のないこの部屋に、2つの心臓の音。

そんな音に気づかされるのは、自分の気持ち。


待って、俺、いつから。


いつからハナエちゃんのこと……




まだ高校生だった頃、俺達の未来がこんな風に繋がるなんて想像もしていなかった。

きっと平等ではない幸せの数。

だけどもし、もしも本当に幸せが平等に訪れるんだとしたら。

俺に埋めることはできる?

きっと物凄く足りない彼女の幸せの数を、俺に埋めることはできるかな?



「あのさ、ハナエちゃん……」

「……」

「……今日、一緒に寝よっか」



自分からキスをしたくせして、恥ずかしくて目を見れなくて、だから彼女がどんな表情なのかもわからないけど。

想いはもう、俺の中では確かなものに変わっていた。

いつからなんて分からない。

どうしてなのかも分からない。

でも確実に、今、胸の奥にしっかりと確認できたから……



ズルイんだ。

だって彼女はこの家にいること自体に気を遣っているから、一緒に寝るって要望を断れるわけがない。

分かりきってて聞いてんだから、俺も相当悪い男だ。


「あの」

「大丈夫、なんもしないから」


何かをするつもりはない。

彼女が体を売ってた過去がある以上、そんな軽く体に触れられるわけがない。

いや、あんま自信はないけど。


でも今はただ隣に、ただそばに、いたいだけなんだ……

< 209 / 566 >

この作品をシェア

pagetop