やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ねぇねぇ、このお財布可愛くない?」
「あ、ほんとだ、可愛いね」
数日後、陽菜が机の上に広げている雑誌には、サーモンピンクのお財布が載っている。
女の子っぽくて陽菜に似合いそう。
「可愛いよねぇ、でもちょっと高いなー」
すっかり意気投合した私たちは、休み時間や放課後をいつも一緒に過ごすようになっていた。
「クリスマスプレゼントに買ってもらうとか?」
「あ、そっか!」
雑誌を持った陽菜が、嬉しそうに柏木くんのほうへ駆けて行く。
プレゼントをねだって柏木くんの腕をグイグイ揺らすその姿は、女の子の私から見ても可愛らしい。
しばらくしてご満悦な表情で戻ってきた陽菜が、なんだか微笑ましかった。
「そうだ、今日ね、帰りにひでの家行くんだけどハナエも一緒に行こうよ」
「え、いいの?」
「うん、志月くんも来るだろうし、ね、行こう?」
「うん、じゃあ行こうかな」
なんとなくだけど、陽菜と一緒にいるようになってわかってきたことがある。
多分、陽菜はこのクラスの女子とはあまり親しくない。