やがて春が来るまでの、僕らの話。
全てを話した。
あの町で起きた悲しいことも嬉しいことも、全部を話した。
「陽菜の痛みに私がちゃんと応えていれば、きっと陽菜は今も生きてた」
きっと今も、陽菜はこの瞬間も生きていた。
「お父さんもお母さんもいなくなって、陽菜の人生まで奪ってしまって…」
もしかしたら私は疫病神なんじゃないかって、本気で思った時期もある。
誰かを不幸にする力を持っているんじゃないかって、死にたくなったこともある。
「……生きていても辛いことばっかりで、本当に疲れちゃった時期があってね」
「……」
「駅のホームから、飛び下りようとしたことがあったの…」
本当に誰も知らない話し。
誰も聞きたくないような、重い話し。
「だけど……あと少しで落ちる。ってところで、私の足は止まった」
「……」
「…あの時ね」
駅のホームで最後の1歩を踏み出そうとした、あの時。
「…浮かんだの、頭の中に」
本当に突然、頭の中に浮かんだの……
「……柏木くんと若瀬くんの顔が、浮かんだ」
死への最後の1歩が止まった瞬間、ホームに入ってきた電車の突風と共に、大粒の涙が溢れだした。
頭に浮かんだ彼らは高校生の姿のままで、あの頃と同じ制服姿で私を呼んだ……