やがて春が来るまでの、僕らの話。
【杉内side】
「命日?」
「うん、明日陽菜ちゃんの命日なんだって」
午後3時過ぎ、南波くんが絵を描くアーケードの下に遊びに来た俺は、彼にその話を聞いた。
「そっか、だから律くん今日実家帰るって言ってたんだ」
「そうなの?」
「この間飲み会のことで連絡した時言ってた」
「それってハナエちゃんは?」
「行かないって言ってたよ」
「そっか」
こんな風に暇な時間があれば一緒にいるようになった俺たちは、カフェのコーヒーをお供に行きかう人たちの姿を目で追っていた。
南波くんがアーケード下で絵を描くのは毎日夕方の5時過ぎまでで、その後はアトリエにこもって本業の仕事をしているらしい。
芸術家って感じでカッコイイよね、そういう生き方。
「そうだ、飲み会ね、みんなの休み合わないから4月になりそうなんだけど大丈夫?」
「うん、俺いつでも平気」
「じゃあ次のシフト俺とハナエちゃん休み希望一緒に出しとくから、決まったら教えるね」
「うん」
「じゃあそろそろ仕事行くかな」
「おう、頑張りたまえ」
まだ中身が入ってるコーヒー片手に、俺は裏にあるパスタBARへと向かって行った。