やがて春が来るまでの、僕らの話。
「この街に、こんなに静かなところがあったんだね」
「うん、俺も初めて来たときは感動したな」
「初めて来たのっていつ?」
「前付き合ってた彼女に振られた時かな」
「え、杉内くんが振られたの?」
「そう、誰にでも優しい人はいや!ってね」
自嘲気味に笑ってみたら、もったいないことする子もいるもんだねぇって返事がきたから、ちょっとだけドキっとした。
前の彼女に振られた時は、「誰にでも優しい人」と「特別な人にだけ優しい人」は、どっちが正解なのかをこの丘で必死に考えたりもした。
考えたって結局分からなくて、考えるのが面倒になって放棄したんだ。
「明日……」
「ん?」
「いや、12時回ったからもう今日か。陽菜ちゃんの命日、なんでしょ?」