やがて春が来るまでの、僕らの話。
ハナエちゃんはどうして知っているのかって驚いた顔をしたけど、その表情はすぐに消えていった。
「……うん、7回目の命日」
「律くんと一緒に行かなくてよかったの?」
聞いたらハナエちゃんは、膝を抱えたまま黙り込んだ。
7年前の今日の日が、彼女にとって、律くんにとって、それから律くんの幼馴染くんたちにとって、どれだけ辛い日だったのか。
きっと俺の失恋なんか比じゃない程の悲しみがあって、その記憶は一生消えることはないんだと思う。
「……怖いんだ」
「怖い?」
「あの町に行くのが、すごく怖い」
冷たい風が彼女の髪を揺らした後、ハナエちゃんは膝の上に顔を伏せた。
「残してきた想いがいっぱいありすぎて、怖い」
何年か前、律くんが同じようなことを言っていたのを思い出した。
あれはまだ律くんと出会ったばかりの頃で、きっとまだ、陽菜ちゃんの死から立ち直れていなくて。
律くんの傷が、今よりずっと表面的に見えていた頃……