やがて春が来るまでの、僕らの話。

【ハナエside】




途端にシンとなった個室には、重苦しい空気が流れている。



ねぇ私、捨ててなんかないよ。

過去を捨てるなんて、そんなこと出来るわけないじゃん……



「……会いたかったもん」

「……」

「ほんとはずっと……会いたかった」

「……」

「若瀬くんと柏木くんに…………会いたかった……」



涙が零れ落ちそうな顔を隠したくて俯いたら、堪えていたものが一気に溢れ出してくる。


会いたかった。

本当はこの日を夢見ていた。


死ななくて良かったって、今、心からそう思うもん……



「、……ごめんなさい」

「……」

「あのとき…、何も言わないでいなくなって…ッ、…ごめんなさい…」



泣きながら告げたその言葉は、きっと私が1番伝えたかったこと。


ごめんなさいって、本当はずっと言いたかったんだ……

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