やがて春が来るまでの、僕らの話。
【柏木side】
「カッシー、ほら」
仲直りしろ、的な目で見てきた律くん。
目を逸らしても視線を感じて、とてもじゃないけど逃げられそうもない。
「……ごめん」
「っ……」
「悪かった……」
目の前でハナエが泣いていて、時間が戻ったような感覚がした。
高校の教室にでもいるような、そんな感覚。
懐かしさと切なさが混じるこの感じは、きっと俺たちにしかわかんない。
「俺もごめん、あの時なんも気づいてやれなくて……彼氏だったのに」
志月くんの声に、ぶんぶん首を横に振りながら、ハナエは肩を震わせ泣いている。
「来年は一緒に行くぞ、墓参り」
そう伝えたら、「うん」って一言返事が聞こえた。
錯覚はもう起こさない。
ここは教室じゃないし、俺たちはもう高校生じゃない。
大丈夫。きっとここからまた始まっていく……
……なんてね。
そんな風に思える強さ、俺のどこを探したって、
そんなのどこにも、存在しないんだ。