やがて春が来るまでの、僕らの話。
【倉田side】
「はい、てことで再会終了ー!就職祝いの宴会始めようぜー!」
なんとなく話が進んでいったところで、一際明るい声をわざとに出した。
空気を少しでも明るく変えるため、わざとに。
「ハナエちゃん、泣きすぎじゃない?」
未だに泣いているハナエちゃんに、杉内が苦笑いを向けている。
「う"ぅ……だっでぇ」
「ねぇ、つーか誰、この人」
カッシーが疑問を投げかけると、「だからぁ、この人は南波くんで」ってすかさず答えたのは杉内だ。
だけど。
「いやアンタのことなんすけど」
「え"、俺さっき紹介されたじゃん!」
「あの状況で覚えてねーわ」
当事者のように当たり前にいる二人に、カッシーと志月は揃って苦笑い。
だから改めて紹介することにした。
「そのちょっとうるさい感じのが杉内、こっちに来て仲良くなった友達」
「君たち俺の1個下でしょ?杉内さんって敬意を持って呼ぶように!」
「で、杉内はなんの店やってるって?」
「うおい!」
「バーテンやってんの。こう見えて腕はいいから今度連れてってやるよ」
「へぇ、腕いいんだ。人は見かけによらないってやつ?」
「テメコノヤロ、カクテルに辛子入れてやっからな!」
「んふふ、入れたらまじでクレーム入れてクビにすっからな」
「ひぇ!?」
「一応言っとくけど、カッシーには口で勝とうとしないほうがいいよ」