やがて春が来るまでの、僕らの話。
【倉田side】
「あの、…長い間お世話になりました」
「いや、こちらこそ」
あれから1ヶ月が経った。
カッシーと志月とハナエちゃんが再会して、1ヶ月。
引っ越し資金が溜まった彼女は今日、この部屋を出ていく。
そして俺はというと……
やばい、なんかすっごい淋しい。
「あの、さ」
玄関先で大きな鞄を抱えた彼女が俺の方に振り向いて、最後の言葉を待っている。
何を言う?
最後に俺は、何を言う?
「あの……」
「うん」
告白。
告白……
告白!
「たまにはまた遊びに来てよっ」
うおっ、なに言ってんだ俺!
「うん、遊びにくるね」
あぁ、そんな笑顔で言われたらもう何も言えない……。
あぁ…
あぁ……。
こうしてハナエちゃんは俺の部屋から去って行った。
数ヶ月の同居生活、彼女との触れ合いは、たった1度のキスだけだった……