やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ねぇ谷さん。私、ずっと谷さんに謝りたくて……」
「え?」
「ほら、私のせいであの時、陽菜とケンカになっちゃったでしょ?ずっとそのことが気になってて……」
オレンジの薄暗い灯りの中、武田さんは悲し気に眉を下げて私を見た。
「……ごめんね、本当に」
「、……」
「本当に、ごめんなさい……」
目の前で、深く頭を下げられる。
だから私は焦って、言葉を届けた。
「武田さんのせいじゃないよ」
「でも、」
「武田さんは、なにも悪くない」
「、…」
彼女の髪が、サラサラっと肩から落ちていった。
あの頃とは違うその髪型が、どれだけの年月が経ったのかを教えてくれているみたいで……
長い間、武田さんも苦しんでいたことが伝わってきた。
「ねぇちょっとぉ、もしかしてこの人がアンタがいつも話している谷さん~?」
武田さんの正面に座っているお客様が、タイミングを見計らうように会話に参加してきた。