やがて春が来るまでの、僕らの話。


翌日、朝起きると外は一面銀世界に変わっていた。


「ほんとに積ってるー…」


昨日まで出ていたアスファルトが白く染まっていて、まるで違う世界に迷い込んだみたいだ。


「すごい、真っ白…」


雪に覆われた世界に興奮して、少し早めに家を出た。


「行ってきまーす!」

「気をつけてねー」



雪を踏むと、きしむ音。

蹴飛ばすと、サラサラと広がる白い雪。

何もかもが新鮮で、何もかもが初体験。

だけどそんな興奮する脳内を埋める、もうひとつのもの。

登校中の私の頭を過る、あの人のこと。


若瀬志月。

真っ白い雪の中、彼の存在が頭を行ったり来たりしている。


───“……一目惚れならぬ、笑顔惚れ?”


冗談、だよね?

冗談じゃなかったら、どんな顔で会えばいいのかわからない。


「うぃーっす!」

「わっ、びっくりした!」


学校まで残り五分程の道端で、後ろから突然柏木くんが現れた。

半分考え事をして歩いていた私の心臓は、飛び出しそうなくらいに驚いている。


「そんなボケっと歩いててコケても知らねぇよ?」

「失礼な、そんな簡単にコケ、」

ズル

「わっ!?」
「、っぶね」


ズルっといった私の腕を、柏木くんが掴んでくれた。


「ほら見ろ」

「スミマセン…。」


歩き慣れていない雪道は、私にとっては強敵だ。

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